2025-05-13

【AWSで始める機械学習】

AWS Glue:サーバーレスで始めるデータ統合 - ETLの概念と活用事例

AWS Glue:サーバーレスで始めるデータ統合 - ETLの概念と活用事例

はじめに

データドリブンな意思決定がますます重要となる現代において、様々な場所に散在するデータを統合し、分析可能な形に変換するプロセス(ETL:Extract, Transform, Load)は不可欠です。AWS (Amazon Web Services) が提供する AWS Glue は、サーバーレスでスケーラブルなデータ統合サービスであり、複雑なETL処理を効率的に実現します。

本記事では、AWS Glueの基本的な概念から、その主要な機能、そして具体的な活用事例までを幅広く解説します。

データ統合(ETL)の重要性と課題

企業が保有するデータは、データベース、データレイク、SaaSアプリケーションなど、様々な場所に分散しています。これらのデータを統合し、分析や機械学習に活用するためには、ETLプロセスが不可欠です。

しかし、従来のETLツールや手作業によるデータ統合には、以下のような課題がありました。

  • インフラの管理

ETLサーバーの構築、管理、スケーリングに手間とコストがかかる。

  • 複雑な処理の実装

大量のデータや複雑な変換ロジックを実装するには、高度な専門知識が必要となる。

  • バッチ処理が中心

リアルタイムに近いデータ処理が難しい場合がある。

  • 変化への対応

データソースや要件の変更に柔軟に対応するのが難しい。

AWS Glueは、これらの課題を解決し、より効率的で柔軟なデータ統合を実現します。

AWS Glueとは?その主要な特徴

AWS Glueは、サーバーレスでフルマネージドなETL (Extract, Transform, and Load) サービスです。主な特徴は以下の通りです。

  • サーバーレスアーキテクチャ

インフラの管理が不要で、処理に必要なコンピューティングリソースは自動的にプロビジョニングおよびスケーリングされます。

  • フルマネージド

ETLジョブの実行、監視、再試行などがAWSによって自動的に管理されます。

  • 多様なデータソースに対応

Amazon S3、Amazon RDS、Amazon Redshift、Amazon DynamoDBなど、様々なAWSデータストアやオンプレミスのデータソースに接続できます。

  • 自動スキーマ検出 (AWS Glue DataBrew)

データの形式や構造を自動的に検出し、プロファイリングします。

  • 強力な変換機能

SparkまたはPythonを用いて、複雑なデータ変換処理を記述できます。GUIベースのビジュアルETLツール (AWS Glue Studio) も利用可能です。

  • ジョブスケジューリングとトリガー

定期的なジョブ実行や、イベントに基づいたジョブのトリガーを設定できます。

  • 統合されたデータカタログ (AWS Glue Data Catalog)

データソースのメタデータ(スキーマ、場所など)を一元的に管理し、他のAWSサービスと共有できます。

  • コスト効率

実行時間に応じた従量課金制であり、アイドル時のコストはかかりません。

AWS Glueの主要コンポーネント

AWS Glueを理解する上で重要なコンポーネントを紹介します。

  • AWS Glue Data Catalog

データソースのメタデータを保存する中央リポジトリ。テーブル定義、スキーマ、パーティション情報などを管理します。

  • AWS Glue ETLジョブ

実際のデータ抽出、変換、ロード処理を実行するコード(SparkまたはPython)。

  • AWS Glue Studio

GUIベースのビジュアルインターフェースで、コーディングなしでETLジョブを作成・管理できます。

  • AWS Glue DataBrew

コーディング不要で、データのクレンジング、正規化、変換などのデータ準備タスクを実行できるビジュアルツール。

  • AWS Glue クローラー

データストアをスキャンし、スキーマ情報を自動的にData Catalogに登録します。

  • AWS Glue トリガー

ETLジョブの実行を開始するメカニズム(スケジュールベース、イベントベース、オンデマンド)。

  • AWS Glue ワーカー

ETLジョブの実行に必要なコンピューティングリソース。

AWS Glueの基本的な使い方

AWS Glueを使った基本的なデータ統合の流れを見ていきましょう。

  • データソースの接続

AWS Glueにデータソースへの接続情報(接続文字列、認証情報など)を設定します。

  • クローラーの実行

クローラーを設定し、データソースのスキーマ情報をData Catalogに登録します。

  • ETLジョブの作成

AWS Glue Studioまたはスクリプトエディタで、データ変換ロジックを定義するETLジョブを作成します。

  • ジョブの実行と監視

作成したETLジョブを実行し、AWS Glueのコンソールで実行状況を監視します。

  • ロード先の指定

変換後のデータをロードする先のデータストア(S3、Redshiftなど)を指定します。

  • トリガーの設定

必要に応じて、ジョブの実行スケジュールやトリガー条件を設定します。

AWS Glueの活用事例

AWS Glueは、様々なデータ統合のユースケースで活用されています。

  • データウェアハウスの構築

複数のデータソースからデータを統合し、Amazon Redshiftなどのデータウェアハウスにロードします。

  • データレイクの構築と管理

大量の非構造化データをS3に格納し、AWS Glueでカタログ化して分析に活用します。

  • ログ分析

Webサーバーのログやアプリケーションのログを処理し、分析可能な形式に変換します。

  • SaaSアプリケーションデータの統合

SalesforceやMarketoなどのSaaSアプリケーションのデータを抽出し、他のデータと統合します。

  • 機械学習のためのデータ準備

機械学習モデルの学習に必要なデータを抽出、変換、整形します。

  • リアルタイムデータ処理

Kinesisなどのストリーミングデータソースからデータを取り込み、リアルタイムで変換処理を行うことも可能です。

まとめと今後のステップ

AWS Glueは、サーバーレスの特性を活かし、データ統合の複雑さと運用負荷を大幅に軽減する強力なサービスです。

今後は、AWS Glueのより高度な機能(Glue DataBrew、リアルタイム処理、カスタムコネクタなど)についても学習を深め、データ統合のニーズに合わせた活用方法を検討していこうと思う。

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