2025-05-20
【AWSで始める機械学習】
K-Meansアルゴリズムとは?機械学習の教師なし学習で顧客を「クラスタリング」
機械学習の手法は大きく「教師あり学習」と「教師なし学習」に分けられます。K-Meansアルゴリズム は、その中でも代表的な教師なし学習の一つであり、与えられたデータを類似性に基づいて自動的にグループ分けする「クラスタリング」のアルゴリズムです。顧客セグメンテーションや異常検知など、多岐にわたる分野で活用されています。
本記事では、K-Meansアルゴリズムの基本的な概念から、その仕組み、メリット・デメリット、そしてAWSのサービスを活用してK-Meansクラスタリングを実践する方法までを分かりやすく解説します。データに隠されたパターンを発見し、新たな知見を得るK-Meansの世界へ踏み出しましょう!
教師なし学習とは
教師あり学習が正解データ(ラベル)を持つデータから規則を学習するのに対し、教師なし学習は正解データを持たないデータから、データ自身の構造やパターンを発見する手法です。
クラスタリングとは
データポイント間の類似性に基づいて、それらを「クラスター(群)」と呼ばれるグループに自動的に分割するタスクです。同じクラスター内のデータポイントは互いに似ており、異なるクラスターのデータポイントとは異なると考えられます。
K-Meansアルゴリズムは、指定されたクラスターの数(K個)にデータを分割する、シンプルで効率的なクラスタリング手法です。
Kの選択
まず、データをいくつのグループに分けるか(Kの数)を事前に決定します。
初期セントロイドの配置
K個のクラスターの中心点(セントロイド)をランダムにデータ内に配置します。
ステップ1: データポイントの割り当て
各データポイントについて、K個のセントロイドのうち最も近いものに割り当てます。
ステップ2: セントロイドの再計算
各クラスターに割り当てられたデータポイントの平均値を計算し、その平均値を新しいセントロイドの位置とします。
繰り返し
ステップ1とステップ2を、セントロイドの位置がほとんど変化しなくなるか、指定された反復回数に達するまで繰り返します。
この繰り返しにより、データポイントは最適なクラスターに割り当てられ、セントロイドは各クラスターの中心に収束していきます。
K-Meansには以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
シンプルで分かりやすい:
アルゴリズムの仕組みが直感的で理解しやすいです。
計算が高速
大規模なデータセットに対しても比較的迅速に処理を実行できます。
実装が容易
多くの機械学習ライブラリでK-Meansが提供されており、手軽に利用できます。
解釈が容易
クラスターの平均値や特徴量を調べることで、各クラスターの特性を解釈しやすいです。
デメリット:
Kの数の事前指定:
クラスターの数Kを事前に指定する必要があり、最適なKを見つけるのが難しい場合があります(エルボー法などの手法が使われます)。
初期値への依存
初期セントロイドの配置によって結果が異なる場合があります。複数回試行し、最適な結果を選ぶことが推奨されます。
球状のクラスターに限定
非球状の複雑な形状のクラスターや、密度の異なるクラスターをうまく分離できないことがあります。
外れ値の影響
外れ値(異常なデータポイント)がセントロイドの位置に大きな影響を与える可能性があります。
AWSは、K-Meansアルゴリズムを含む様々な機械学習モデルの構築と実行をサポートするサービスを提供しています。
Amazon SageMaker K-Means
Amazon SageMakerに組み込まれたK-Meansアルゴリズムを利用することで、大規模なデータセットに対してもスケーラブルにK-Meansクラスタリングを実行できます。
データの前処理からモデルの学習、推論(どのクラスターに属するかを予測)まで、SageMakerの統合環境で一貫して行えます。
ハイパーパラメータチューニングの機能も活用し、最適なKの数やその他のパラメータを探索することも可能です。
Amazon SageMaker Data Wrangler / AWS Glue
K-Meansクラスタリングを行う前には、データの準備と前処理が非常に重要です。
SageMaker Data WranglerやAWS Glueは、異なるデータソースからのデータを統合し、K-Meansに適した形に整形するために役立ちます。
Amazon S3
クラスタリングの対象となる大量のデータを、安価でスケーラブルなAmazon S3に保存します。SageMakerはS3上のデータに直接アクセスして学習を実行できます。
Amazon QuickSight / Amazon Athena:
K-Meansの結果(各データポイントがどのクラスターに属するか)を可視化したり、さらに分析したりするために、Amazon QuickSightやAmazon Athenaと連携させることができます。例えば、QuickSightでクラスターごとの顧客属性をグラフ化し、その特徴を把握するといった活用が考えられます。
K-Meansは、様々な業界で活用されています。
顧客セグメンテーション
顧客の購買履歴や行動データに基づいて、類似する顧客グループ(例:高頻度購買者、割引志向者、新規顧客など)を特定し、ターゲットマーケティング戦略を立案します。
異常検知
通常のデータポイントとは異なるパターンを示すクラスターを特定することで、システム障害、不正取引、セキュリティ脅威などの異常を検知します。
画像処理
画像の色情報やピクセル値に基づいて、画像をセグメンテーションしたり、色を量子化したりするために使用されます。
ドキュメント分類
テキストドキュメントの内容に基づいて、類似するトピックを持つドキュメントをグループ化します。
遺伝子解析
遺伝子発現パターンに基づいて、類似する細胞タイプや疾患をクラスタリングします。
K-Meansアルゴリズムは、教師なし学習の強力なツールであり、データに内在する構造やパターンを発見するのに役立ちます。そのシンプルさと効率性から、様々な分野で幅広く活用されています。
AWSのAmazon SageMakerや他の関連サービスを活用することで、K-Meansクラスタリングを大規模なデータセットに対しても容易に適用し、ビジネスに新たな知見をもたらすことができます。
今後は、ご自身のデータを使って実際にK-Meansクラスタリングを試してみたり、Kの数を最適に決定する「エルボー法」などの手法についても学習を深めてみてください。
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