2025-05-20

【AWSで始める機械学習】

Amazon SageMaker DeepAR:時系列予測に特化

Amazon SageMaker DeepAR:時系列予測に特化

はじめに

ビジネスや科学の様々な分野で、将来の値を予測する「時系列予測」は非常に重要な課題です。株価の変動、商品の需要、サーバーの負荷、気象データなど、時間とともに変化するデータからパターンを抽出し、未来を予測することは、より良い意思決定を可能にします。

AWS (Amazon Web Services) が提供する Amazon SageMaker DeepAR は、ディープラーニングを活用した時系列予測に特化したマネージドサービスです。複雑な時系列データから高精度な予測を行うことを目指します。

本記事では、Amazon SageMaker DeepARの基本的な概念から、そのメリット、利用の流れ、そして具体的な活用事例までを分かりやすく解説します。時系列データの未来を予測し、ビジネスの競争力を高めるDeepARの世界を探求しましょう!

時系列予測の課題とDeepARの登場

従来の時系列予測手法(例:ARIMA、指数平滑化など)は、比較的シンプルなデータや短期間の予測には有効でした。しかし、以下のような課題に直面することがあります。

  • 複雑なパターン

季節性、トレンド、外部要因、複数の関連する時系列間の相互作用など、複雑なパターンを持つデータに対応するのが難しい。

  • 大量の時系列データ

数千、数万といった多数の時系列を一度に予測する場合、各時系列に対して個別にモデルを構築・管理するのは非効率。

  • 欠損値の扱いにくさ

欠損値が多い時系列データの処理が難しい。

  • 予測区間の提供

点推定だけでなく、予測の不確実性を示す予測区間(信頼区間)の提供が難しい。

Amazon SageMaker DeepARは、これらの課題を克服するために、ディープラーニング(リカレントニューラルネットワーク、RNN)をベースにしたモデルを採用しています。

Amazon SageMaker DeepAR とは?その主要なメリット

Amazon SageMaker DeepARは、多数の関連する時系列データから学習し、高精度な予測を行うためのアルゴリズムです。主なメリットは以下の通りです。

  • ディープラーニングによる高精度な予測

大規模なデータセットと複雑なパターンを持つ時系列データから、より深い洞察を学習し、従来の統計モデルよりも高精度な予測を実現します。

  • 多数の時系列を一度に学習

関連する複数の時系列をまとめて学習することで、個々の時系列だけでは捉えられない共通のパターンや相互作用をモデルに組み込めます。これは、類似商品の需要予測や、同じ地域の異なる店舗の売上予測などに特に有効です。

  • 予測区間の提供

点推定だけでなく、予測の不確実性を示す予測区間(信頼区間)を生成できます。これにより、リスクを考慮した意思決定が可能になります。

  • 欠損値への対応

データに欠損値が含まれていても、モデルが自動的にその影響を考慮して学習を進めます。

  • コバリアット(共変量)の利用

祝日、プロモーション、気温などの外部要因(コバリアット)をモデルに含めることで、予測精度をさらに向上させることができます。

  • フルマネージドサービス

インフラのセットアップや管理はAWSが全て行うため、ユーザーはモデルの学習と予測に集中できます。

  • 簡単なデプロイ

学習済みのモデルは、SageMakerのエンドポイントとして簡単にデプロイし、リアルタイムで予測を行うことができます。

Amazon SageMaker DeepAR の基本的な使い方

DeepARを利用した時系列予測モデル構築の基本的な流れを見ていきましょう。

データの準備

  • 複数の時系列データを含むJSON Lines形式のファイルをAmazon S3にアップロードします。各行が1つの時系列を表し、ターゲット値、開始時刻、オプションでコバリアットなどを含みます。

  • 例: 商品の売上データ、サーバーのCPU使用率など。

DeepARモデルの学習

  • SageMakerコンソールまたはSDK/APIを通じて、DeepARアルゴリズムの学習ジョブを作成します。

  • S3のデータセットの場所、予測したい期間、学習に必要なハイパーパラメータ(例:エポック数、ニューラルネットワークの層数など)を指定します。

モデルの評価

  • 学習済みモデルの性能を評価するために、検証データに対する予測を行い、実際の値と比較します。

  • RMSE(二乗平均平方根誤差)やMASE(平均絶対スケール誤差)などの評価指標を確認します。

モデルのデプロイ

  • 学習済みのモデルをSageMakerのエンドポイントにデプロイします。これにより、APIを介してリアルタイムで予測リクエストを送信できるようになります。

予測の実行

  • デプロイされたエンドポイントに対して、新しい期間の時系列データを入力として送信し、予測結果を取得します。予測区間も同時に取得できます。

Amazon SageMaker DeepAR の活用シーン

DeepARは、幅広い業界で時系列予測に活用されています。

  • 需要予測

小売業や製造業で、将来の商品需要や部品の必要量を予測し、在庫管理や生産計画を最適化します。

  • リソース計画

クラウドインフラのサーバー負荷やネットワークトラフィックを予測し、リソースのプロビジョニングを効率化します。

  • 金融市場分析

株価や為替レートの変動傾向を予測し、投資判断の参考にします。

  • 売上予測

特定の商品やサービスの将来の売上を予測し、マーケティング戦略や予算策定に役立てます。

  • 電力消費予測

スマートメーターデータなどから電力消費量を予測し、電力供給計画に活用します。

  • 気象予測

気温、湿度、降水量などの時系列データから、将来の気象条件を予測します。

  • 医療・ヘルスケア

患者のバイタルサインや疾患の進行状況を時系列で追跡し、将来のリスクを予測します。

まとめと今後のステップ

Amazon SageMaker DeepARは、ディープラーニングの力を使って、複雑な時系列データから高精度な予測を可能にする強力なサービスです。多数の関連する時系列を一度に学習できる点や、予測区間を提供できる点は、従来の予測手法にはない大きなメリットです。

今後は、ご自身の時系列データセットを使ってDeepARを実際に試してみたり、コバリアットの追加、ハイパーパラメータチューニングなど、より高度な機能も活用して、予測モデルの精度をさらに高めていくことをお勧めします。

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